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ルーフトップバーK36|元・小学校の屋上で、八坂の塔を正面に呑む

K36 Rooftop 屋上から見た八坂の塔と京都市街

清水坂で八ッ橋を食べ終えたのが12時40分だった。

その27分後、私は同じ町内の屋上で、ジントニックを前にしていた。

K36 Rooftop ジントニックと八坂の塔
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K36 The Bar & Rooftop。京都、八坂の塔のすぐそばにあるホテルの屋上のバーである。

先に断っておくと、この訪問は2025年4月21日のことで、この記事を書いているいまからは1年以上前にあたる。値段は書かない。手元に伝票の記録がなく、うろ覚えの数字を書くくらいなら書かないほうがましだからだ。飲んだものと、見えた景色と、そのとき考えていたことだけを報告する。

なお、この日の午前中の記録は別にある。元祖八ッ橋 西尾為忠商店 清水店|1997年から28年通っているがそれで、通算10回ぶんの定点観測をまとめてある。そちらを読んでから戻ってきてもらってもいいし、読まなくても話は通じる。

目次

坂を下りたぶんを、エレベーターで取り返す

八ッ橋の店は清水坂の途中にある。そこから坂を下って、八坂の塔が見えるほうへ歩く。ゆっくりで10分ほどの道のりだが、この日は快晴で、坂道は観光客でよく埋まっていた。

目当ての建物は、その八坂通りに面して建っている。

黒い石張りの壁と、古い校舎の意匠が並んでいる。ザ・ホテル青龍 京都清水という。もとは京都市立清水小学校で、いま使われている校舎は昭和8年(1933年)に建ったものだ。2011年に閉校して東山開睛館に統合され、その建物を保存・活用するかたちで、2020年3月にホテルとして開業している。

K36は、そのホテルの中にあるバーだ。室内の「K36 The Bar」と、屋上テラスの「K36 Rooftop」の2つがあって、この日私が入ったのは屋上のほうである。

エレベーターで上がる。坂を下りてきたぶんを、エレベーターで取り返したような格好になった。

角の席に案内された

屋上に出ると、視界が急に開けた。

K36 Rooftop テラス席のテーブルと京都の空
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案内されたのは角の席だった。丸いグレーのテーブルに、黒いラタン編みの椅子。頭上にはPERONIのパラソルが差してある。テーブルのまわりは膝の高さの植え込みで囲われていて、ローズマリーらしい細い葉が伸びていた。

角の席というのは、こういう店ではかなり良い席である。二方向が見えるからだ。

一方には、八坂の塔がある。写真のとおり、見上げるのではなく、ほとんど正面から見る高さに塔が立っている。その向こうに京都の市街地が広がり、さらに奥に西山の稜線が横たわっている。

そしてもう一方には、東山の緑がある。

K36 Rooftop チェイサーのペリエとカットグラス
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こちらは山がすぐそこまで迫っていて、同じ席に座ったまま首を振るだけで、街と山が入れ替わる。

サービスをする方の所作についても書いておきたい。ビシッとされていた。 服装も、皿の置き方も、下がるときの引き際も、全部がきちんとしていた。屋外のテラス席で、しかも隣は観光地のど真ん中という場所なのに、店の内側の空気だけがきれいに整っている。この落差が、この店のいちばんの特徴だったと思う。

頼んだもの

ジントニック(トニックウォーターが瓶ごと刺さって出てくる)

最初の一杯はジントニックにした。

出てきたものを見て、少し笑った。

バルーン型のワイングラスに、氷とジンとライムが入っている。そこに、トニックウォーターの瓶が逆さまに刺さっている。

瓶はFEVER-TREE の Premium Indian Tonic Waterだった。瓶の口をグラスの氷に伏せてあるので、飲んだぶんだけトニックが少しずつ落ちてくる、という仕掛けである。自分のペースで割り具合を決められるし、何より見た目が派手だ。

ジンの銘柄は控えていない。覚えていないものを書くわけにいかないので、ここは空欄にしておく。

味は、正直に言えばジントニックの味だった。この一杯を特別にしていたのは中身ではなく、瓶が刺さっているという事実と、その向こうに塔が立っているという配置のほうである。

ペリエ(チェイサー)

同時にペリエを頼んだ。

小瓶と、カットの入った脚付きのゴブレットで出てくる。グラスにはライムが一枚落としてあった。

酒を飲みながら炭酸水を並走させるのは私の癖で、とくに昼から飲むときは必ずこうする。昼の酒は、水を挟まないと後半が全部つぶれる。 この日はこのあとにも予定があったので、なおさらだった。

ガラスのカットに日が入って、テーブルに模様が落ちていた。写真を撮ったのはそのためである。

クリームチーズ2種とクロスティーニ

つまみを1皿頼んだ。

K36 Rooftop クリームチーズ2種とクロスティーニ
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砕いた氷を敷いた白い舟形の皿に、丸く切ったクリームチーズが並んでいる。2種類あって、3切れずつ。

奥の3切れには、赤紫色のドライフルーツが練り込まれている。干し葡萄だと思う。手前の3切れには、琥珀色の粒が一面に入っていた。刻んだナッツに見える。

正直に書くと、私はこのもう一種類のほうを覚えていなかった。何が入っていたか思い出せないまま写真を見直して、拡大して、ようやく「ああ、ナッツだったのか」と分かった。記録のために写真を撮っておくというのは、こういうときに効く。

別皿に、薄く切って焼いたバゲット――クロスティーニが5〜6枚。チーズを載せて食べる。冷やしたクリームチーズと、乾いたパンと、ジントニック。この3つの組み合わせに間違いはない。

エスプレッソマティーニ

ゆっくり過ごしたあと、2杯目にエスプレッソマティーニを頼んだ。

K36 Rooftop エスプレッソマティーニと八坂の塔
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クープグラスに、濃い茶色の液体と、上に厚く泡が立っている。コーヒー豆が1粒だけ浮かせてある。

エスプレッソマティーニは、私が個人的に気に入っているカクテルだ。 中目黒のスターバックス リザーブ ロースタリーでも同じものを頼むことがある。まったく別の街の、まったく別の業態の店で、同じ名前のカクテルを注文している。中目黒の話は別に書いた順番としては中目黒のほうが先で、この屋上の一杯はその続きにあたる。

写真の奥で、八坂の塔がぼけている。ピントはグラスに来ていて、塔は輪郭だけになっている。撮ったときは失敗したと思ったが、いま見ると、この日の順序としては正しい写真だった。私はこのとき、景色よりグラスを見ていたのだ。

屋上の縁に、シャンパンの瓶が並んでいる

飲み終わるころ、屋上の縁を見て、もう一度写真を撮った。

K36 Rooftop 屋上から見た八坂の塔と京都市街
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ローラン・ペリエの瓶が、手すりの内側にずらりと並べて立ててある。 ロゼの瓶と白の瓶が交互に、植え込みの前に一列。その向こうに八坂の塔があり、京都の街があり、遠くに山がある。

装飾なのだと思う。しかし、ここが元は小学校だと知ったうえでこの光景を見ると、ちょっと妙な気持ちになる。

1997年、私が大学生で、この坂をはじめて上っていたころ、この建物にはまだ子どもが通っていた。閉校は2011年だから、当時は現役の小学校である。

正直に書くと、当時の私がそれに気づいていたかどうかは、まったく覚えていない。 八ッ橋を目当てに坂を上って、食べて、下りてきただけだ。坂の途中に小学校があったかどうかなど、記憶にひとかけらも残っていない。

それでも、校舎はそこにあった。その上に、いま私は立っていて、シャンパンの瓶越しに塔を見ている。

同じ町の、同じ番地の並びだ。 午前中に八ッ橋を食べた店は清水二丁目にあり、このホテルも清水二丁目にある。私は結局、この日ずっと同じ町内をうろうろしていたことになる。

1997年の自分に、飲ませてやりたかった

京都では、自分にご褒美を出すことにしている。

これは大げさな話ではなくて、1997年の自分にはできなかったことを、いまならやってみよう、というくらいの意味だ。学生のころの私は、清水坂を上って八ッ橋を食べて帰った。それで十分に満ち足りていたし、それ以上の選択肢は現実的に手の中になかった。

その同じ町で、いまの私はホテルの屋上に上がり、角の席に案内され、瓶ごと刺さったジントニックを飲んでいる。

かっこいいなあ、と思った。

念のために書いておくと、かっこいいのは私ではない。この場所と、この酒のほうである。 私は同じ坂を、同じように上って下りているだけの人間で、そこは28年前と何も変わっていない。変わったのは、坂の途中にあった小学校が、屋上のあるホテルになったことのほうだ。

つまり、同じ場所に通い続けていると、こちらが動かなくても、場所のほうが動く。

1997年の自分に飲ませてやりたい空間と酒だった、と素直に思う。飲ませてやることはできないので、代わりに記録に残しておく。

研究員の結論

また行くか:行く。 ただし、行くとしたら次は室内の「The Bar」のほうに、夜に入ってみたい。

屋上は昼に開く。この日私が入ったのは13時7分で、掲示によれば屋上の営業開始は13時だったから、開いてすぐの時間に上がったことになる。 おかげで席は空いていて、静かだった。昼の屋上は、混む前の1時間がいちばん良い。 これは覚えておく価値がある。

一人でも入りやすいかというと、入りやすい。 テラスの席はそれぞれ独立していて、隣との距離があり、カウンターに座って店員と話す種類の店ではない。景色があるので、間が持たないということも起きない。むしろ一人のほうが、景色と酒に集中できる。

向いているのは、京都の観光の途中に一度だけ「上」に行きたい人である。清水寺から八坂神社へ向かう道は、地図で見ればわずかな距離だが、実際には人の波の中を歩き続けることになる。その途中で1時間だけ人の頭より上に出る、という使い方をすると、午後の残りがかなり違ってくる。

向いていないのは、安く長く飲みたい人だ。ここはそういう店ではない。

K36 The Bar 室内バーの入口とウイスキーの棚
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帰りに、室内バーの入口の前を通った。扉の向こうにウイスキーの瓶が壁一面に並んでいるのが見えて、金色の案内板が立っていた。屋上とは完全に別の店の顔をしている。 次に来るときはこちらだ、と思いながら降りた。

時刻は13時50分だった。このあと私は、二年坂のスターバックスへ向かうことになる。

店舗情報

項目内容
店名K36 The Bar & Rooftop
所在地京都市東山区清水二丁目204-2 ザ・ホテル青龍 京都清水
アクセス八坂の塔(法観寺五重塔)のすぐそば。京阪「清水五条」駅から徒歩約15分、市バス「清水道」下車すぐ。清水坂からは坂を下って徒歩10分ほど
訪問日2025年4月21日(月)13:07〜13:50ごろ

※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。2025年4月の訪問時に現地の案内板で確認していますが、その後変更されています。屋上テラスは天候によって営業しないこともあるので、行く前に必ず公式サイトでご確認ください。

※価格は掲載していません。訪問から時間が経っており、記憶で書くと不正確になるためです。

関連する調査報告

※記事中の飲食物・店内の様子はいずれも筆者が実際に訪問して見聞きしたものです。訪問は2025年4月21日で、本記事の公開時点から1年3か月前にあたります。価格は掲載していません。

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