年に一度、福岡に行く。当研究所の遠征研究のうち、奄美大島と並ぶもうひとつの柱である。
2026年の遠征は7月17日から。この遠征で入った酒場が3軒ある。初日の夜に博多駅前から櫛田神社のそばへ2軒はしごし、その3日後の夜に西中洲で1軒。福岡5年目で、はじめて夕方の中洲を歩いた遠征でもあった。
この記事は、その3軒をまとめたものである。それぞれの単独記事は別にあるので、ここでは「1回の遠征をどう組み立てたか」と「3店を並べて見えてきたこと」を書く。

2026年7月・福岡遠征の3店
方針は毎回同じで、九州にちなんだものを頼む。焼酎、鯖、明太子、うどん。その土地でしか成立しない皿を選んでいくと、遠征の記録は勝手に土地の記録になる。
| 店名 | 最寄り駅・徒歩 | 業態 | 訪問 |
| 博多 鯖鉄 | 博多駅 徒歩8分 | 鯖の割烹・小料理 | 7/17(1軒目) |
| 博多あかちょこべ | 中洲川端駅 徒歩5分 | うどんと酒 | 7/17(2軒目) |
| 西中洲 海鮮酒場 すぅ。 | 天神南駅 徒歩4分 | 海鮮酒場 | 7/20 |
3軒とも、地下鉄の駅から徒歩8分以内にある。福岡の呑み歩きは、この一点でとても楽だ。
初日の夜——博多駅前から櫛田神社へ、はしご2軒
博多 鯖鉄(博多駅 徒歩8分/7/17・1軒目)
飛行機を降りて、まっすぐ向かった1軒目。店名の通り、鯖にこだわった割烹・小料理屋である。「五島サバ 活イカ」の赤提灯が目印だ。
18時30分に入って、店内はすでに満席だった。初訪問でこの光景を見せられると期待は嫌でも高まる。看板は「五島鯖鉄引き」と「胡麻鯖」の二枚。私が注文したのは、まさにその二枚だった。

1杯目は吟醸芋焼酎「磨き大島」のロック。途中から日本酒に切り替えて、福岡・八女の喜多屋の辛口と、駿の純米吟醸を飲み比べた。焼酎から日本酒への流れが組み立てやすい店で、遠征の初日にはちょうどいい。
→ 博多 鯖鉄|博多駅から徒歩8分、看板の「五島鯖鉄引き」と胡麻鯖を食べてきた
博多あかちょこべ(中洲川端駅 徒歩5分/7/17・2軒目)
鯖鉄を出て、20時すぎに2軒目へ。櫛田神社のそばにある「うどんとお酒」の店だ。
看板メニューは「釜あげ ずぼら」。やかんに入ったうどんが出てきて、麺を自分で引き出し、つゆの椀にくぐらせて食べる。熱々のまま最後の一本まで食べられる仕組みになっている。麺は「古式胚芽うどん」と呼ばれるもので、コシは強すぎず弱すぎない。讃岐系の跳ね返してくる麺とは、明らかに別の設計だった。

ここでも1杯目は焼酎ロック。そして、メニューに胡麻さばがあったので頼んだ。同じ晩に胡麻鯖を2度食べたことになるが、これは検証のためである(後述)。刺身で一軒やってから、うどんで締める。この組み立ては福岡の型として使えると思っている。
→ 博多 あかちょこべ|やかんに入って出てくるうどんを、鯖鉄のはしご2軒目で食べてきた
3日後の夜——5年目にして、はじめて歩いた中洲
西中洲 海鮮酒場 すぅ。(天神南駅 徒歩4分/7/20)
福岡に通って5年。博多駅にも天神駅にも毎回行くのに、中洲は昼間に通り過ぎるだけだった。日本三大歓楽街のひとつを、5年かけて素通りし続けていたことになる。
この夜は夕方に那珂川の川沿いを歩いた。屋台が提灯を灯しはじめる時間で、昼間に見ていた景色とはまったく別の街だった。そのまま流れで、おすすめされた海鮮酒場に入った。

刺身の盛り合わせを一人前で頼めて、締めは土鍋で炊いた明太子のおにぎり。この日の主役は「わさび塩で食べるしめ鯖」だった。醤油ではなく塩で出すということは、締め加減と鯖の質に自信があるということだ。
そして焼酎である。芋の三岳と、米の堕天使。グラスの縁ぎりぎりまで注いでくれる。

→ 西中洲 海鮮酒場 すぅ。|わさび塩で食べるしめ鯖が絶品、焼酎は縁ぎりぎり
3店を並べてわかった、福岡で外さない3つの原則
こうして並べてみると、3軒でやっていたことが揃っていた。これが本稿のいちばんの成果である。
原則①:一杯目は焼酎ロックでいい
3店すべてで、1杯目に焼酎のロックを頼んでいた。狙ったわけではなく、メニューを開いたら自然にそうなった。品揃えが芋・米・麦とそろっていて、グラスで頼める。そして九州の店は焼酎をケチらない。すぅ。では縁ぎりぎりまで注がれた。奄美大島でも同じことを感じたが、この一杯の量の差だけで遠征の満足度は変わる。
原則②:鯖があれば頼む。3店とも当たりだった
3店すべてで鯖を食べていた。鯖鉄で五島鯖鉄引きと胡麻鯖、あかちょこべで胡麻さば、すぅ。でわさび塩のしめ鯖。同じ魚が、刺身・胡麻だれ・酢締めの3つの顔で出てきたことになる。
そして全部うまかった。現地の友人がくれた「九州で胡麻鯖は外れなし」という説は、この遠征で2店連続の支持を得た。胡麻鯖に限らず、福岡で鯖を軸に組み立てると外れにくい。これは3軒という小さなサンプルではあるが、確度の高い所見だと思っている。
原則③:1日1エリアに絞る
初日は博多駅前から冷泉町へ、3日後の夜は西中洲。移動をエリア内で完結させると、はしごが軽くなる。3軒とも駅から徒歩8分以内なので、エリアを決めた時点で移動時間はほぼ消える。
はしごを組むなら、営業時間も見ておくといい。
※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前に必ず各店にご確認ください。
鯖鉄は日曜休み、あかちょこべは日曜が昼のみ。日曜が遠征日程に入る人は、すぅ。が効いてくる。逆にすぅ。は16時開店なので、「明るいうちに川沿いを歩く → 早い時間に座って呑む → 屋台へ出る」という組み立てもできる。
中洲を歩くために、中洲に泊まった
この遠征では、宿の取り方も変えている。
私は福岡では、街の外に泊まることが多い。だから5年通って、博多に泊まったのはこの1回だけである。
理由ははっきりしていた。中洲を歩いてみたかったからだ。
選んだのは博多エクセルホテル東急。福岡市博多区中洲4-6-7、中洲川端駅から徒歩2分。——つまり中洲のなかである。
立地は、目的どおりだった。夕方に部屋を出て、そのまま川沿いを歩いて西中洲まで行った。館内も清潔で、綺麗だった。
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ただし、書けることが少ない
正直に書いておく。私はこのホテルの食事もサービスも、ほとんど受けていない。
着いてすぐ街に出てしまい、翌朝は大濠公園まで10キロ歩いた。戻ってきて、そのまま出発している。
だから私が書けるのは、立地と清潔さだけである。朝食がどうだったか、大浴場があるのか、そういうことは何も言えない。
中洲で呑む日の宿としては、申し分なかった。そこだけは確かである。
次の遠征への宿題
3軒とも、頼まなかったものを残して帰ってきた。
すぅ。では生簀のヤリイカをさばく「イカの活き造り」に手を出さなかった。鯖鉄の赤提灯にも「活イカ」と書いてある。あかちょこべのやかんうどんは並み盛りで、もう少し入るなと思いながらやめた。2軒目だったからである。
宿題が残るのは、遠征研究の常だ。1回で店を食べ切ってしまうと、次に行く理由がなくなる。だから毎回、意図せず何かを残して帰る。
研究員の結論
また行くか:3店すべて、次回の候補に挙がる。
年に一度の遠征では、1軒の当たりを引くだけでその年の福岡が良い年になる。今年は3軒とも当たりだった。鯖で始まり、うどんで締め、3日おいてまた鯖に戻った遠征である。
そして5年目にして、はじめて夕方の中洲を歩いた。それだけで福岡の見え方が変わった。毎年同じ街に行っていても、行っていない場所はまだ残っている。来年の遠征は、そこから始めることになると思う。
日常圏の呑み歩きのほうへ
遠征ではない側の記録、そしてもうひとつの遠征先は、こちらにまとめてある。
→ 日常圏の呑み歩き8店まとめ|平塚・町田・青葉台から御徒町まで【のべ99回】
→ 奄美大島の飲み屋街は屋仁川(やんご)|6回通って選んだ名瀬・笠利の9店
→ 京都・清水坂から祇園まで4店まとめ|28年、同じ道しか歩いていない研究員の2日間【2025年4月】
また、この3店とは別に、同じ福岡でも2022年に岡垣町まで足をのばして入った鮨屋がある。今回の遠征とは年も場所も違う記録だが、福岡で店を探すときの選択肢としてここに置いておく。
→ 鮨屋台 岡垣総本店|カウンターの正面が海だった。福岡・岡垣で白身を一貫ずつ食べてきた
さらにこの遠征には、酒を一滴も飲まなかった午前中もある。2日目の朝、篠栗町の南蔵院で涅槃像を見たあと、焙煎所でコーヒーを飲んだ。呑み歩きの合間にある「飲まない時間」の記録として、あわせて置いておく。
→ 篠栗珈琲焙煎所|3年空けて2度訪ね、まったく同じ2杯を頼んでいた。涅槃像のあとのコーヒー
※記事中の料理・ドリンクはいずれも筆者が訪問した2026年7月時点のものです。最新の情報は各店舗にご確認ください。