最初にこの店に入った理由は、カレーチャーハンだった。
らーめんが目的ではなかった。カレーチャーハンが食べたくて、それが食べられる店を探して、ここに入った。
5回通った。そして記録を並べたら、逆になっていた。

5回の記録
| 回 | 日付 | らーめん | ご飯もの |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 2023年11月4日(土) | 塩 | カレーチャーハン |
| 2回目 | 2024年2月11日(日) | 塩 | カレーチャーハン |
| 3回目 | 2024年3月10日(日) | 塩 | マーボー丼 |
| 4回目 | 2025年1月21日(火) | 塩 | カレーチャーハン |
| 5回目 | 2026年1月6日(火) | 塩 | 中華丼 |
らーめんは5回とも塩。ご飯もののほうだけ、3種類に変わっている。
目的だったはずのカレーチャーハンが可変の側にいて、ついでだったはずのらーめんが固定になっている。
塩は「変更」である
ここが自分でも面白いところだ。
この店のらーめんセットは、醤油が基本である。塩は「変更できます」という扱いになっている。
つまり5回とも、私は「変更」を選んでいる。基本を一度も食べていない。
理由ははっきりしていて、私は澄んだスープが好きだからである。1回目に塩を頼んで、それが良かった。
そして次からも塩をやめられなくなった。
醤油も悪くないと思う。というより、食べていないのだから分かるはずがない。それでも頼めない。品書きを見て、毎回同じところで手が止まる。
5回頼んで、一度も醤油に行けていない。
シンプルな塩らーめん

出てくるものは、毎回同じである。
澄んだスープ。細麺。ワカメ、チャーシュー、メンマ、ネギ。
飾りはない。凝ったこともしていない。シンプルな塩らーめんである。
これを5回、まったく同じ顔で出してくる。そのことのほうが、たぶん難しい。
セットは7種類あった

卓の上に、手書きのPOPが立っている。
「めちゃめちゃお得ならーめんセット」。そこに組み合わせが7つ書いてある。
- らーめんと鶏肉うまに丼
- らーめんとマーボー丼
- らーめんと中華丼
- らーめんとカレーチャーハン
- らーめんと天津丼
- らーめんとカレー丼
- らーめんとチャーハン
7種類ある。
そして私が5回で試したのは、カレーチャーハン、マーボー丼、中華丼の3種類である。
さらに言うと——「らーめんとチャーハン」がちゃんとあるのに、私はカレーチャーハンのほうを選んでいる。
ご飯もののほうは、変えられる

3回目にマーボー丼を頼んだ。
カレーチャーハンは美味しい。それは間違いない。だから1回目も2回目もそれを選んだ。
でも他も試したい。そう思って、3回目に変えた。

5回目は中華丼にした。
つまりご飯もののほうでは、ちゃんと「試したい」が働いている。7種類あるうちの残り4つも、いずれ食べるのだと思う。
らーめんのほうでは、それが一度も働かない。
なぜ片方だけ動かないのか
考えてみた。
たぶんご飯ものは「おかず」で、らーめんは「土台」だからではないかと思う。
土台が同じだから、おかずを変えて比べられる。逆をやると、比較が成立しない。らーめんを毎回変えて、ご飯ものを固定していたら、私はどちらの記憶も残らなかった気がする。
もうひとつある。
塩らーめんを頼むのは、選択ではなく確認になっている。「今日も同じであること」を確かめに行っている。5回とも同じ顔で出てきて、5回とも同じように美味しい。それを確かめるのが目的になっている。

比べる店と、比べない店がある
私は別の記事で、こういうことを書いてきた。
中目黒では、エスプレッソマティーニを3種類飲み比べて、いちばん最初の一杯に戻ってきた。
秦野の蕎麦屋では、4種類ある蕎麦を毎回2種類ずつ頼んでいる。1種類だと比べられないから、という理由で。
この店では、比べていない。
同じ店に何度も行くという行為の中に、比べに行く場合と、確かめに行く場合の2つがあるのだと思う。どちらが上ということはない。
藤華軒は、確かめに行く店である。
「街中華」という言い方について
この店を説明するとき、私は街中華という言葉を使う。
高級店ではない。専門店でもない。餃子もチャーハンもラーメンも天津飯もある店である。何でもある代わりに、何かに特化してはいない。
こういう店の良さは、何でもあるのに、いつも同じものが頼めることだと思う。
専門店だと、そもそも選択肢が少ない。だから同じものを頼んでも、それは必然である。街中華で同じものを頼み続けるのは、7種類の選択肢を毎回見たうえで、同じところに戻ってきているということだ。
自分で選び直している。5回、毎回。
私が通う、数少ない街中華

伊勢原駅から歩いてすぐ。赤いテントに、龍の飾り。壁一面にメニューの写真が貼ってある。
町中華である。
この写真は2026年8月8日、前を通ったときに撮ったものだ。この日は入っていない。それでも撮っている。

箸袋に顔のイラストが入っている。「中国料理 藤華軒」。
私が通う街中華は、正直なところ多くない。その数少ないうちの1軒である。
昼にしか行っていない
もうひとつ、記録を見て気づいたことがある。
5回とも昼で、しかも5回中4回が11時台だった。開店してすぐの時間に入っている。
昼は地元の人や勤め先の人で混む店である。混む前に入っている、ということだと思う。
そして5回目だけが13時48分。この日は遅い昼だった。
研究員の結論
また行くか:行く。そして次も塩を頼む。
この店で分かったのは、入口と、通う理由は別物になるということだった。
カレーチャーハンで入って、いまはカレーチャーハンのために行っていない。塩らーめんのために行っている。しかもそれは、最初は目に入っていなかったものだ。
店に何度か行くと、自分が何を目当てにしていたかが、あとから書き換わる。
これはたぶん、店の側からは見えない。私が毎回同じものを頼んでいることは伝わっても、それが最初は目的ではなかったことまでは伝わらない。
向いているのは、同じものを頼むのが苦にならない人。そして昼に11時台に動ける人。
次は、残り4種類のご飯もののどれかにする。らーめんは塩のままで。
店舗情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 店名 | 中国料理 藤華軒(とうかけん) |
| 所在地 | 神奈川県伊勢原市桜台(伊勢原駅から徒歩すぐ) |
| 頼んだもの | らーめんセット(らーめんは5回とも塩に変更)/ご飯ものはカレーチャーハン3回・マーボー丼1回・中華丼1回 |
| 訪問 | 5回(2023年11月4日/2024年2月11日/2024年3月10日/2025年1月21日/2026年1月6日)+外観のみ1回(2026年8月8日) |
| 酒 | 飲んでいません(すべて昼のランチ) |
※価格は掲載していません。筆者の記憶があいまいで、正確に書けないためです。卓上POPの写真は2023年11月時点のもので、現在は改定されています。
※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前にご確認ください。
※セットの組み合わせは2023年11月時点のものです。内容は変わっている可能性があります。
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※記事中の飲食物・店内の様子はいずれも筆者が実際に訪問して見聞きしたものです。飲食代はすべて筆者が自分で支払っています。