当研究所の定点観測は、これまで「盤石な1軒目から2軒目へ歩き出す」型ばかりだった。だが海老名には、その型がまったく通用しない店がある。着席したら、その日満足するまで席を離れられない店。居酒屋おーるすたぁず、11回通った観測を報告する。
11回通ってわかったこと
わかったこと①:ここは「長居する店」である
味の笛や匠ダイニングが「次へ歩き出すための1軒目」だとすれば、おーるすたぁずは正反対だ。私の中では数少ない、長居をさせてもらう店。長年かけて11回、そのたびに腰を据えて、気づけば夜が深くなっている。呑み歩きの研究所を名乗っておきながら、この店に入ると歩かなくなる。それだけの理由がある。
わかったこと②:BGMは終日サザン。3時間いても曲がかぶらない
店名から察しがつくと思うが、店内に流れるのはサザンオールスターズの曲だ。それも、ただ流れているのではない。サザンの曲数は1日で聴き終わるような量ではないから、3時間いても同じ曲は流れてこない。そしてリクエストをすると、その曲をかけてくれる。聴きたい曲が次々に浮かんで、席を立つタイミングを失う。長居の正体はこれである。
わかったこと③:人気店ゆえ、飛び込みには「制限時間」がある日も
11回の観測でわかった現実的な注意点がこれだ。人気店のため、予約なしで飛び込んでも、「次のご予約のお客様が来るまで」という条件付きで入れてもらえる日が少なくない。満足するまで長居したいなら、予約をして行くのが正解である。
店の基本情報とアクセス
場所は小田急線・海老名駅から徒歩1〜3分、駅前の商業施設ビナウォーク2番館1階にある「呑み処 ビナ横丁」の中だ。横丁形式なので、初めてでも入りやすい。席は掘りごたつが主体でカウンターもあり、全席禁煙。
閉店時刻は曜日や日によって変わるようなので、遅い時間の訪問や長居前提の夜は、事前に確認するのが確実だ。
頼んだもの
黒ホッピーを、コーヒー焼酎で

この店にはサザンの曲名をアレンジしたオリジナルドリンクが豊富にある。その中で私が好きなのが、黒ホッピーを透明の焼酎ではなく、黒いコーヒー焼酎で作ってくれる一杯だ。黒に黒を重ねる。香ばしさが乗った黒ホッピーは、ここでしか飲んだことがない。
正直に白状すると、このドリンクの正式なネーミングは忘れてしまった。10回通ってこれである。ただしコーヒー焼酎は数量限定で、呑み切りで売り切れる日もあるので、あるうちに頼むのが研究員の助言だ。
定番3品①:手羽先唐揚げ

私の注文は、この店でもほぼ固まっている。定番の1つ目が秘伝ソースの手羽先唐揚げ。長居の夜の、序盤の主役である。
定番3品②:長芋のお好み焼き

2つ目が長芋のお好み焼き。かつお節がたっぷり躍る、ふわとろの一枚。粉もののお好み焼きとは別物で、これを目当てに通っている部分がある。
定番3品③:うずらのたまご醤油漬け

3つ目がうずらのたまご醤油漬け。小さいのに、酒を進ませる力は大きい。ちびちびと長く付き合えるのも、長居の店のアテとして正しい。
そこに、その日の追加を挟む

定番3品を軸に、刺身やサラダ、おひたしのような一品をその日の気分で足していく。長丁場になるので、こういう箸休めが効いてくるのだ。
11回目|2026年8月6日、あの一杯に名前があった
久しぶりに入った。17時36分、まだ外は明るい。通されたのはカウンターで、横の壁にはサザンオールスターズのポスターが貼ってあった。店内に流れているのも、当然サザンである。この店は、こちらが何回目でも同じ顔で迎えてくれる。

10回わからなかった名前が、11回目にわかった
この記事の上のほうで、私はこう書いている。「正直に白状すると、このドリンクの正式なネーミングは忘れてしまった。10回通ってこれである」と。
11回目にして、ようやく品書きを撮ってきた。

「黒い恋人達ホッピー」。それがあの一杯の名前だった。
あわせて訂正しておく。私はこれまでこの記事で「コーヒー焼酎」と書いてきたが、品書きの表記は「コーヒー酒」である。11回かかって、ようやく正しく書けるようになった。
白で頼むと、コーヒー酒の味が前に出る
そしてこの日、はじめて白で頼んだ。

いつもは黒である。10回とも黒だった。ところが白にしてみると、黒よりさっぱり飲めて、コーヒー酒の味そのものが感じやすい。ホッピーの主張が下がるぶん、コーヒーが前に出てくる。
おかわりは黒にした。

こちらはコクが増す。そして写真を並べてみると、泡の色が違う。白で作ったほうは泡が白いままで、黒で作ったほうは泡がうっすら茶色い。同じ名前の一杯なのに、注いだ瞬間の見た目から違っている。
10回通って名前も知らなかった一杯が、11回目に名前と、二つの顔を同時に見せてきた。
串焼きは、どの皿にも味噌がついてくる
この日頼んだのは、串焼きが5本。ももタレ、かしらタレ、つくねタレ、ささみ塩、うずら塩。それと冷奴。

気づいたことがある。串焼きは、どの皿にも味噌が添えて出てくる。笹の葉を敷いて、その上にひと匙。タレの串にも、塩の串にも、同じようについてくる。

この味噌が、それだけで酒が進む。串を食べ終わったあとに残った味噌を舐めて、ホッピーを飲む。それで一杯分が終わる。

そして卓上を見ると、調味料は醤油と七味唐辛子しか置いていない。皿ごとに味噌がついてくるのだから、卓上に何種類も並べる必要がない。潔い。
外ホッピー1本で、中を4杯おかわりしていた頃
昔の話をする。
私はかつて、外のホッピー1本で、中の焼酎を4杯おかわりしていた。当然、後半は味が薄くなる。それでも構わなかった。むしろ濃いホッピーが美味かった。量と濃さを両方追いかけられる体だった。
いまは違う。アルコールの濃さよりも、その日の気分と体調で決めている。白で始めて黒でおかわり、という今日の頼み方も、たぶんその延長にある。
体は無敵ではない。
これは諦めの話ではない。濃さを追いかけなくなったぶん、白と黒の違いのような、細かい差が見えるようになった。10回通って名前を知らなかった一杯の名前を、11回目に確かめる気になったのも、たぶん同じことだと思う。
長居の店で、25分で帰った

この記事の主題は、ずっと「長居する店」だった。着席したら、その日満足するまで席を離れられない店。そう自分で書いている。
ところがこの日、私は17時36分に入って、18時01分に出ている。写真の記録がそうなっている。25分。会計は2,512円だった。
サッと飲んで帰った。長居の店で、はじめて長居しなかった。
それでも、今日も良い気分でサザンを聴けた。3時間いても25分でも、この店から持ち帰るものは同じだった。11回目にしてわかったのは、たぶんそれである。
店の空気

掘りごたつに腰を落ち着け、サザンを聴きながら、黒いホッピーを傾ける。カウンターにはオリジナルドリンクのメニューが並び、次は何を頼もうかと眺めているうちに、また1曲終わる。時間の流れ方が、他の居酒屋とは違う店だ。
研究員の結論
また行くか:行く。ただし、予約をして、時間に余裕のある日に。
向いているのは、サザンオールスターズが好きな人(これは言うまでもない)。そして、1軒で夜を完結させたい日がある人。ハシゴの計画は、この店には要らない。
長居する分、帰る頃にはかなり酔わせてもらっている。海老名の駅までの短い帰り道、気づけばサザンの曲を口ずさんでいる。それがこの店の観測記録の、毎回変わらない結びである。
店舗情報
| 店名 | 居酒屋 おーるすたぁず |
| 住所 | 神奈川県海老名市中央1-8-1 ビナウォーク2番館1F「呑み処 ビナ横丁」内 |
| アクセス | 小田急線 海老名駅から徒歩1〜3分 |
| 業態 | 居酒屋(全席禁煙・掘りごたつ主体+カウンター) |
※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前に必ず店舗にご確認ください。