
この焼酎は、市販されていない。
ラベルに「JUNIOR 27」と書いてある。私が作ってもらったものだ。JUNIORは私の名前である。このブログでも姉妹ブログでも、私はジュニアと名乗っている。
2026年の5月から6月にかけて、徳之島の株式会社奄美大島にしかわ酒造に依頼して、36本だけ作った。
やってみるまで知らなかったことが、いくつもあった。税務署が出てくるとは思っていなかった。
そもそも、なぜ27度なのか

ベースにしたのは「あまんゆ」という黒糖焼酎である。私がいちばん好きな銘柄だ。
このブログでは何度か、25度と30度の違いについて書いてきた。名瀬の若大将で「あまみ六調」の30度をロックで飲んだ話や、奄美の飲み屋街のガイドでも触れている。
私の結論はこうだった。
- 25度は、氷が溶けると薄まる
- 30度は、最初が濃い
- 27度は、最初から美味しい
あまんゆは27度である。だから好きなのだと思う。
原材料は黒糖(国内製造)と米麹(タイ産米)。内容量900ml。製造者は、鹿児島県大島郡徳之島町の奄美大島にしかわ酒造。
この「27度」の話は、最後にもう一度出てくる。
「奄美群島内限定」と書いてある

ラベルに金色の丸いマークがある。「奄美群島内限定」と読める。
この焼酎は、本来は奄美群島でしか売っていない。
このブログでは前に、黒糖焼酎は酒税法の特例で奄美群島でしか造れないという話を書いた。あまんゆはそこから一歩進んで、造る場所だけでなく、売る場所まで奄美群島の中に限られている。
その焼酎に、東京に住んでいる私がラベルを付けた。
9案から、⑤を選んだ
酒造から届いたデザイン案は9パターンあった。
どれも海だった。青い海、波、水中、光。そのなかで私は⑤を選んだ。⑤は、水の中から見上げて、海面から光が差し込んでいる絵である。
理由がある。
奄美大島の晴れるベーカリーの店主は、私の前職の同期で、付き合いは26年になる。そして奄美大島の出身だ。
その彼から、あるとき聞いた。「奄美の海は、青い色が濃い」。
後日、倉崎海岸に連れて行ってもらった。確かに青かった。
そのとき彼はこうも言った。「太陽の光がさすと、もっと青くなる」。
そして——実際に光が当たった。海が青く、キラキラした。
あの光を、ラベルにしたかった。
だから⑤だった。9案のうち、いちばん光が差していたのが⑤だったのである。
税務署が出てきた
ここからが、やってみないと分からなかったところである。
36本で発注したあと、酒造からこう返ってきた。
「あまんゆオリジナルラベル」は、弊社といたしまして今回初めての作成となりますので、所轄の税務署へ届け出が必要となっており、お時間を頂戴しております。税務署より許可を頂き次第、オリジナルラベルを作成致します。
酒造にとっても、初めてだった。
私は「デザインを渡せば貼ってもらえる」くらいに思っていた。そうではなかった。
誰が、何を届け出るのか
気になったので、国税庁の資料を調べた。「表示方法届出の手続」というものがある。
- 届出をするのは、酒類を製造場から移出する「酒類製造者」
- 提出するのは、酒類を製造場から出荷する時まで
- 根拠は酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令 第8条の3
つまり、届け出るのは酒造である。私ではない。
買う側には、免許も届出も要らない。私は販売していないので、酒類販売業免許も関係ない。私がやったのは、注文して、代金を払って、受け取っただけである。
手続きは、全部あちら側で起きていた。
さらに、こうも言われた。
頂いたデータでは直接の作成が出来ない為、(筆者の)イメージデータに沿って再現作成させていただきます。
私が渡したデータは、そのままでは使えなかった。印刷用の仕様が違ったのだと思う。酒造の側で作り直してもらっている。
手間をかけている。それも、初めてのことを。
オリジナルラベルを考えている人がいたら、ここは知っておいたほうがいい。
あなた自身の手続きは、何もない。面倒なのはそこではない。デザインを送れば終わり、でもない。
届出と作り直しの負担は、全部、酒造の側に乗る。だから時間がかかる。急かす筋合いのものではなかった。
台風が来て、割れた
5月に発注して、届いたのは6月だった。
まず、台風の影響で発送が遅れた。準備が整って、ヤマト便で発送された。6月9日、3個口。1箱12本だから、36本で3箱である。
そして——届いた箱のひとつが、破損していた。
私がしたことは、たいしたことではない。ヤマト便から連絡が来て、1箱12本の納期が数日遅れただけである。
大変だったのは、にしかわ酒造のほうだと思う。2度手間になっている。
再発送の連絡には、こう書かれていた。
前回の破損事故がありましたので、今回は日本郵便にて発送致します。
業者を変えている。
6月22日着で、残りの12本が届いた。発注から、およそ6週間だった。
あとから知った、27度の意味

ここまでが、私が知っていて選んだことである。
この記事を書くにあたって調べていて、知らなかったことが出てきた。
「あまんゆ」という名前は、「奄美世(あまみゆ)」から来ているという。自由でゆったりとした、奄美の先史時代を指す言葉だそうだ。
そして——度数が27度なのは、「北緯27度線」にちなんでいる。
私は知らなかった。
北緯27度線とは何か
調べて、少し手が止まった。
敗戦後、奄美と沖縄はアメリカの統治下に置かれた。当初の分断ラインは北緯30度線だった。
1953年12月25日、奄美群島が日本に復帰した。
このとき、新しい線が引かれた。それが北緯27度線である。
線は、奄美群島最南端の与論島と、沖縄本島最北端の辺戸岬のあいだを通っていた。
1953年から1972年までの19年間、ここが日本の国境だった。
1972年5月15日、沖縄が復帰して、その国境は消えた。
つまり、こういうことだった
「あまんゆ」という名前は、奄美が奄美だった時代を指している。
そして27という度数は、奄美と沖縄が切り離されていた時代の線を指している。
この焼酎は、名前と度数で、奄美の時間を二重に背負っていた。
私はそれを、「ロックで飲んでいちばんうまいから」という理由だけで選んでいた。
この先のこと
36本は、自宅で飲んでいる。友人に配ったりもしている。
そして、もう少し先まで考えていることがある。
酒販ができたら、事業として通販をやりたい。税務署の届出が必要でも、そこはクリアするつもりでいる。
ただ、2026年は初めてラベルを依頼した年だった。今年はまず、作ることが優先だった。
来年も、再来年もラベルを依頼する情熱が私にあるなら——将来的にはオリジナルラベルで一般販売まで持っていって、酒類販売の免許も取りたいと考えている。
「情熱が私にあるなら」と書いたのは、そういうことである。まだ1回目だ。
研究員の結論
この1本で私が持ち帰ったのは、好きなものを突き詰めると、知らなかった歴史に当たるということだった。
私は「ロックで飲んでいちばんうまい度数」という、それだけの理由で27度を選んだ。そこに国境の話があるとは思っていなかった。
知ってから飲んでも、味が変わるわけではない。あまんゆは相変わらず、最初から美味しい。
ただ、手元にある900mlの瓶が、少し違って見えるようにはなった。
奄美群島でしか売っていない焼酎に、東京の人間が自分の名前をつけて、36本だけ作った。そういう1本である。
売り物ではないので、どこにも売っていない。
ラベルは売っていないが、中身は買える
ただし、これは「JUNIOR 27」というラベルの話である。
中身の「あまんゆ」は、普通に売っている。
⚠️ ラベルには「奄美群島内限定」とあるが、通販では扱いがある。私が作ってもらったのと同じ900ml、同じ27度のものが買える。
※上記リンクから購入された場合、当ブログに報酬が入ります。
ラベルが違うだけで、中身は同じである。
そして——この記事を読んだあとに飲むと、27という数字が少し違って見えるはずである。
出典・注記
- 表示方法の届出に関する記述は、国税庁「E4-1 表示方法届出の手続」に拠ります(根拠法令:酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律施行令第8条の3)
- 北緯27度線と奄美群島の日本復帰(1953年12月25日)、沖縄の復帰(1972年5月15日)に関する記述は、複数の報道・公的資料に拠ります
- 「あまんゆ」の名称・度数の由来は、販売元各社の商品説明に拠ります
- ラベル作成の手続きは、酒造や時期、内容によって異なる場合があります。この記事は2026年5〜6月に私が依頼したときの記録です。実際に検討される方は、依頼先の酒造にご確認ください
- ※価格は記載していません
- ※JUNIOR 27は市販されていません。お問い合わせいただいてもお分けできません
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