東京で、奄美大島を味わえた。
神田にある居酒屋奄美という店である。
私は奄美大島に行ったことがある。このブログにも名瀬と笠利の9店を書いてきた。だからこれは、知らない味を試した話ではない。知っている味に、東京で再会した話である。
……のはずだった。
あとから写真を並べてみたら、私はほとんど奄美料理を頼んでいなかった。
まずマルスハイボール

お店の人に勧められて、マルスハイボールにした。
マルスというのは鹿児島の本坊酒造がつくっているウイスキーである。奄美群島は鹿児島県だから、これは筋が通っている。
お通しは、大根おろしと豆苗となめこ。
ここまでは何の問題もない。
これは奄美大島関係ない
最初に頼んだのが、これだった。

いぶりがっこクリームチーズ。クラッカー付き。
これは奄美大島関係ない。
いぶりがっこは秋田である。奄美から1,800キロくらい離れている。
それなのに美味しくて、クラッカーをおかわりした。
入店7分で、私は秋田のものを食べていた。
これは沖縄っぽいね
次がこれである。

炙り塩豚に、柚子胡椒。
赤い皿に、薄く切った豚が並んでいる。
これは沖縄っぽいね、と思った。
そして次の瞬間、自分でこう考えていた。でも鹿児島も黒豚だから、ありか。
言い訳である。
これも奄美大島ではないか
さらに次。

唐揚げ。
これも奄美大島ではないか、と思った。
そしてまた、こう考えた。でも奄美大島も唐揚げは人気でしょ。
また言い訳である。
3品頼んで、3回とも「これは奄美じゃない」と思い、3回とも自分で自分を納得させていた。
そして、油ぞうめん

私が好きな油ぞうめん。
そうめんを茹でて、油で炒めた奄美の郷土料理である。豚肉、玉ねぎ、にんじん、ニラ。奄美では「ぞうめん」と濁って呼ばれることが多い。
名瀬の大島料理かめでは、長寿草の天ぷらが乗ったぞうめんを食べた。あれは店が観光客向けに考えたものだと聞いた。同じ料理でも、店ごとにまったく違う顔になる。
ここはツユ少なめだった。
汁気がほとんどない。だからおつまみとして成り立っている。そうめんというと締めの印象があるが、これは酒と一緒に食べられる。店によってつくりが違う料理なのだと思う。
これが、この日の最後の1品だった。
奄美にたどり着くまで、2時間10分
写真の記録を見たら、こうなっていた。
| 時刻 | 頼んだもの | 奄美か |
|---|---|---|
| 17時35分 | お通し、マルスハイボール | — |
| 17時42分 | いぶりがっこクリームチーズ | × |
| 17時57分 | 炙り塩豚 | △ |
| 18時44分 | 唐揚げ | × |
| 19時45分 | 油ぞうめん | ○ |
奄美の店に入って、奄美料理を頼むまでに2時間10分かかっている。
しかも最後の1品である。締めに持ってきた。
「東京で奄美大島を味わえた」と最初に書いたが、正確には「2時間10分ぶんの寄り道の末に、味わえた」である。
ここで思い出したことがある。
名瀬の呑みんちゅという地元の居酒屋で、私は「17時に入って1時間で出る」という流儀を覚えた。地元の人がそうしていたからである。
奄美では1時間で出た。東京の奄美の店では、2時間10分いた。
どちらが正しいということではない。ただ、旅先では現地の速度に合わせ、東京では自分の速度で飲んでいるというだけの話だと思う。
なお18時44分から19時45分まで、写真が1枚もない。この1時間の記録が残っていない。黒糖焼酎を飲んだのはたぶんこのあたりなのだが、断定はできない。
黒糖焼酎は、奄美群島でしか造れない
黒糖焼酎は飲んだ。銘柄は覚えていない。
ひとつ書いておきたいことがある。黒糖焼酎は、奄美群島でしか造れない。
サトウキビからつくる黒糖を原料にして、米麹を使う焼酎である。そしてこれを「本格焼酎」として造ることが認められているのは、酒税法の特例で奄美群島だけなのだ。他の地域で同じものを造っても、焼酎とは名乗れない。
つまり黒糖焼酎は、それ自体が奄美群島の証明書のようなものである。
この店には、それが揃っている。ぜひ試してもらいたい。
奄美じゃないものがあるから、奄美の店なのだ
ここまで書いて、自分の「これは奄美じゃない」というツッコミが的外れだったことに気づいた。
あとで店のことを調べたら、こう書いてあった。
奄美群島出身の人々がこよなく愛する郷土料理と黒糖焼酎、そしてシマ唄をライブでお届けします
シマへの思いを共有・共感していただける場
この店は、観光客に奄美を紹介するための店ではない。
故郷を離れた奄美の人が集まる場所である。
そう考えると、話が逆になる。
毎週のように通う人が、毎回鶏飯と油ぞうめんだけを食べるだろうか。食べない。唐揚げも食べるし、クリームチーズも食べる。
郷土料理だけを並べている店のほうが、むしろ外向けなのだ。
私が3回もツッコんだメニューは、この店が観光施設ではなく、居酒屋である証拠だった。
奄美じゃないものがあるから、奄美の店なのだ。
シマ唄は、この日はなかった
ちなみにこの店は「シマ唄ライブ居酒屋」を名乗っている。
ただ、この日はライブはなかった。
ライブをやる店だと知ったのは、あとで調べてからである。次に行くときは、それも調べてから行こうと思う。
研究員の結論
また行くか:行く。次は最初から奄美のものを頼む。
この店で私が持ち帰ったのは、郷土料理の店の「らしさ」は、郷土料理の比率では測れないということだった。
雑多なメニューがあることを、私は最初「奄美じゃない」と減点していた。でも実際には、それが地元の人の店である印だった。
故郷の店に、毎回郷土料理を食べに行く人はいない。普通に飲みに行くのである。そのついでに、油ぞうめんがある。その「ついで」に置ける場所を、東京に持っている人がいる。
向いているのは、奄美に行ったことがある人。知っている味に再会できる。
そして、行ったことがない人にも向いている。この店の雑多さのほうが、たぶん本当の奄美に近い。
油そうめんを、4皿並べてみた
この店のも含めて、油そうめんを4皿並べたら、汁の量が1皿ずつ違った。
→ 油そうめん4皿食べ比べ|奄美の郷土料理は、汁の量で顔が変わる
店舗情報
| 店名 | 居酒屋奄美 |
| 所在地 | 東京都千代田区鍛冶町1-2-10 |
| 特徴 | シマ唄ライブ居酒屋。奄美群島のシマ料理とシマ酒、シマ産の物産も扱っています |
| 頼んだもの | マルスハイボール/黒糖焼酎/いぶりがっこクリームチーズ(クラッカー付き)/炙り塩豚 柚子胡椒/唐揚げ/油ぞうめん |
| 訪問日 | 2024年8月23日(金)17:35〜19:45ごろ(初訪問) |
※価格は掲載していません。※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前に必ず店舗にご確認ください。
※ライブの開催日は店舗の告知をご確認ください。