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手打ちそば 信玄(秦野)|名水の街の4種類の蕎麦を、毎回2種類ずつ食べる

手打ちそば 信玄 木の看板

綺麗な水には、良い蕎麦屋がある。

これは私が経験から思っていることで、証明できる話ではない。ただ、この夏に書いてきた記事を並べていて、自分でも少し驚いた。

栃木県佐野市。出流原弁天池湧水という名水百選の湧き水がある街で、澄んだスープのラーメンを食べた。

栃木県足利市。渡良瀬山系の伏流水に恵まれ、古くから「そばの街」と呼ばれてきた土地で、在来種の蕎麦を食べた。

そして、地元にもある。

手打ちそば 信玄 木の看板
木の看板に「信玄 手打そば」。板張りの外壁に格子の引き戸(2026年7月)
目次

秦野も、名水百選の街だった

神奈川県秦野市

秦野盆地湧水群が、1985年に名水百選に選ばれている。

秦野盆地は、丹沢山地と大磯(渋沢)丘陵に囲まれた、神奈川県で唯一の盆地である。そして地下が「天然の水がめ」のような構造になっていて、およそ7億5000万トンの地下水を蓄えているという。

市の水道水の、約7割が地下水である。

さらに——2016年、ボトル水「おいしい秦野の水〜丹沢の雫〜」が、名水百選選抜総選挙の「おいしさが素晴らしい名水部門」で第1位になっている。

百選に選ばれたうえで、その中でもおいしいほうの1位である。

市内には弘法の清水春嶽湧水といった湧き水があり、汲みに行ける場所もある。

秦野市の外れにある

手打ちそば 信玄 通りからの外観
秦野市鶴巻南の住宅街の中。別の日の朝、前を通ったときに撮ったもの(2026年7月)

手打ちそば 信玄。

秦野市の鶴巻南。市の中心部からは離れた、住宅街の中にある。鶴巻温泉駅から歩いて10分ほどの場所である。

木の看板に「信玄 手打そば」。板張りの外壁に、格子の引き戸。隣はシャッターが下りている。言われなければ通り過ぎる佇まいだ。

この写真は、別の日の朝に前を通ったときに撮ったものである。時刻は8時すぎ。当然、店は開いていない。

それでも撮っている。そういう店になっているということだと思う。

石臼挽き、自家製粉

手打ちそば 信玄 店内と十割蕎麦
テーブル席と、運ばれてきた十割蕎麦(2023年11月)

箸袋にこう書いてある。

「石臼挽自家製粉 手打ちそば 信玄」

地元のそばの実を選び、石臼で挽いて、自分のところで粉にしている。店内には古い石臼や道具が置いてある。

そして、ここからが本題である。

蕎麦が4種類ある

信玄には、蕎麦が4種類ある。

  1. せいろ(丸抜き蕎麦・細打ち)——定番
  2. 田舎そば(中太打ち)
  3. 十割蕎麦
  4. 手挽き粗蕎麦
手打ちそば 信玄 せいろ 丸抜き蕎麦の細打ち
丸抜きの細打ち。白っぽく、いちばんするりと入る(2023年12月)

せいろ。丸抜きの細打ちで、白っぽい。竹のざるに乗って出てくる。いちばんするりと入る。

手打ちそば 信玄 田舎そば 中太打ち
中太打ちで色が濃い。噛む感じがはっきりある(2023年12月)

田舎そば。中太打ちで、色が濃い。噛む感じがはっきりある。

手打ちそば 信玄 十割蕎麦
つなぎを使わない。太めで、そばの味が前に出る(2023年11月)

十割蕎麦。つなぎを使わない。太めで、そばの味が前に出てくる。

手打ちそば 信玄 手挽き粗蕎麦
いちばん粗く、粒が見える。箸袋に「石臼挽自家製粉」とある(2023年11月)

手挽き粗蕎麦。いちばん粗い。粒が見える。木の丸いせいろに乗って出てくる。

どれも好きである。

順位をつける気にならない。個性が違うのであって、上下ではない。その日の気分で選べばいいと思う。

毎回2種類頼んでいる

そして、私はこの店で毎回2種類頼む。

1種類では足りない、という意味ではない。1種類だと、比べられない。

写真の記録を並べてみたら、こうなっていた。

日付1品目2品目間隔
1回目2023年11月18日(土)手挽き粗蕎麦十割蕎麦約7分
2回目2023年12月10日(日)田舎そばせいろ(丸抜き細打ち)約6分
3回目2026年3月23日(月)田舎そば十割蕎麦約7分

本当に毎回2種類だった。

自分で言っておきながら、記録で確認すると少しおかしい。3回とも、6分から7分の間隔で2品目が来ている。1つ食べ終えて、それから次を頼む。そのリズムが時刻に残っている。

そして——3回で、4種類すべてを食べている。

手打ちそば 信玄 十割蕎麦 2026年
3回のうち2回頼んでいる(2026年3月)

もうひとつ、記録が教えてくれたことがある。

十割蕎麦を、3回のうち2回頼んでいる。

私は「特に十割蕎麦が好きだ」と思っていた。思っていただけではなく、実際にそう頼んでいた。

手打ちそば 信玄 田舎そば 2026年
田舎そばも3回のうち2回(2026年3月)

田舎そばも2回。この2つが、私の中の軸なのだと思う。

4種類あることの意味

蕎麦屋で種類を増やすのは、たぶん簡単ではない。

打ち分けなければならないからである。細打ちと中太打ちでは切り方が違う。十割はつなぎを使わないので切れやすく、扱いが難しい。手挽きの粗いものは、そもそも粉の作り方から違う。

1種類を完成させるほうが、店としては楽なはずだ。

それでも4種類ある。ということは、この店は「そばの正解は1つではない」と考えているのだと思う。

そして客の側も、それに乗ることができる。今日はするりと食べたい。今日は噛みたい。そういう選び方が許されている。

同じ店に何度も行ける理由は、たぶんここにある。1種類しかない店だと、2回目は「前と同じ」になる。4種類あれば、2回目も3回目も、まだ食べていないものがある。

本当は、日本酒を合わせたい

正直に書いておく。

この店で、私は日本酒を飲みたい。

蕎麦屋で日本酒を飲むのは、江戸時代からの楽しみ方である。石臼で挽いた蕎麦と、名水の街の水。合わないはずがない。

それでも飲んでいない。

車で来ているからである。呑み歩き研究所と名乗りながら、また酒の出てこない記事になった。

ただ、これは我慢というより選択だと思っている。飲めないと分かっていて来る店が、私にはいくつかある。この店もその一つだ。

いつか、飲める形で来られたらいい。

綺麗な水には、良い蕎麦屋がある

最初の話に戻る。

佐野。足利。秦野。

3つとも水の街で、3つとも良い蕎麦屋(あるいはラーメン屋)があった。名水百選に至っては、佐野と秦野で2つ揃っている。

もちろん、これは私が見た範囲の話である。水がきれいでも蕎麦屋のない街はあるだろうし、水を売りにしていない街に名店があることもある。

それでも、蕎麦は水で作る。

そば粉を水でつないで、水で茹でて、水で締める。つゆも水から作る。工程のほとんどに水が入っている。

だとしたら、水の良い土地に良い蕎麦屋が集まるのは、むしろ当たり前なのかもしれない。

研究員の結論

また行くか:行き続ける。

秦野市の外れにあって、住宅街の中にあって、通り過ぎてもおかしくない店である。それでも私は、朝8時に前を通っただけで写真を撮っている。

この店で私が持ち帰ったのは、選べることの豊かさだった。

4種類ある。どれも良い。だから毎回、選ぶという楽しみが発生する。そして2種類頼めば、その日のうちに比べられる。

1種類しかない店にも良さはある。でも、比べると自分の好みが言葉になる。これはでも、ラーメンでも、蕎麦でも同じだった。

向いているのは、蕎麦の違いを面白がれる人。そして車で来る人

次も2種類頼む。たぶん、片方は十割だと思う。

店舗情報

項目内容
店名石臼挽自家製粉 手打ちそば 信玄
所在地神奈川県秦野市鶴巻南(鶴巻温泉駅から徒歩10分ほど
蕎麦せいろ(丸抜き・細打ち)/田舎そば(中太打ち)/十割蕎麦/手挽き粗蕎麦 の4種類
特徴石臼挽き・自家製粉の手打ち。店内に古い石臼や道具の展示あり
訪問食事3回(2023年11月18日・2023年12月10日・2026年3月23日)/外観のみ1回(2026年7月12日)
飲んでいません(車のため)

※価格は掲載していません。筆者が控えておらず、記憶で書くと不正確になるためです。

※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前にご確認ください。

※蕎麦の種類は訪問時点のものです。

※秦野盆地湧水群に関する記述は、秦野市および環境省の公開情報によります。

関連する調査報告

※記事中の飲食物・店内の様子はいずれも筆者が実際に訪問して見聞きしたものです。飲食代はすべて筆者が自分で支払っています。

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