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太平山 山田家(栃木)|焼き鳥・玉子焼き・だんごが並ぶ理由は、献立ではなく奉納だった

太平山 山田家 だんごと関東平野

栃木県栃木市の太平山に行くと、必ず同じものを頼む。

だんご、焼き鳥、玉子焼き、もりそば、ノンアルコールビール。

4回行って、4回とも同じである。自分でも不思議だったのだが、調べてみたら、この組み合わせには理由があった。

太平山 山田家 だんごと関東平野
あんこがたっぷりかかっただんご。柵の向こうは関東平野(2022年11月)
目次

謙信平の茶屋

太平山(おおひらさん)は栃木市の中心部から西へ4kmほど、標高341mの山である。太平山県立自然公園になっていて、山上には太平山神社がある。

その中腹に謙信平(けんしんだいら)という場所がある。

ここからは関東平野が一望できる。晴れて空気が澄んだ日には、東京スカイツリーや東京タワー、富士山まで見えるという。

道沿いに茶屋が並んでいて、そのひとつが山田家である。

店の外に席がある。柵の向こうは、そのまま平野になっている。

焼き鳥・玉子焼き・だんご

太平山 山田家 焼き鳥
思っている以上に肉が大きい。串に刺さる数が少ない(2022年11月)

この土地には「太平山三大名物」と呼ばれるものがある。

焼き鳥、玉子焼き、だんご。

ラーメン屋でも、そば屋でも、居酒屋でもない。この3つがセットで名物になっている。

私はこれを、何度も食べておきながら、なぜこの3つなのかを考えたことがなかった。焼き鳥と玉子焼きは鶏つながりだとして、そこにだんごが入ってくる理由が分からない。甘いものと辛いものが1枚の品書きに並んでいる。

調べてみて、腑に落ちた。

献立ではなく、奉納だった

焼き鳥と玉子焼きの由来はこうである。

夜に鳴く鶏は不吉な知らせをするという言い伝えがあった。そこで、その鶏を太平山神社に奉納した。

奉納された鶏が産む卵を集めて「玉子焼き」に。肉を「焼き鳥」にして供した。これが始まりだと伝えられている。

太平山 山田家 玉子焼きと大根おろし
厚みがあって断面の層が見える。注文を受けてから焼く(2022年11月)

だんごの由来はこうである。

太平山神社には、五穀豊穣を願って、毎年たくさんの穀類が奉納されていた。その奉納された米を分けてもらい、粉に挽いてだんごにした。これが「太平だんご」になった。

つまり、こういうことだ。

焼き鳥も、玉子焼きも、だんごも、すべて「神社に集まったもの」である。

この3つは、献立ではない。奉納の記録である。

料理人が味の相性で組んだ組み合わせではなく、神社に何が納められていたかの一覧が、そのまま名物になっている。だから甘いものと辛いものが同じ品書きに並ぶ。組み合わせの理由が、味の外にある。

こういう成り立ちの名物を、私は他に知らない。

だんごは、あんこがたっぷり

だんごにはあんこがたっぷりかかっている。串に刺さった団子が、あんこに沈んでいる。

上品な量ではない。皿の上であんこが主役の顔をしている。

奉納された米から始まったという話を知ってから食べると、少し見え方が変わる。この甘さは、五穀豊穣を願った人たちの側から来ている。

焼き鳥は、思っているより肉が大きい

太平山 山田家 焼き鳥と青空
秋晴れの下の焼き鳥(2024年11月)

焼き鳥について、書いておきたいことがある。

思っている以上に、肉が大きい。

居酒屋の焼き鳥を想像していると、出てきたときに一瞬止まる。一切れが大きく、串に刺さっている数が少ない。そういう切り方をしている。

タレがしっかりかかっていて、皮の面が照っている。

玉子焼きも美味い。厚みがあって、断面の層が見える。大根おろしが添えてある。注文を受けてから焼いているそうで、たしかに出てくるまでに少し時間がかかる。

太平山 山田家 玉子焼き 2023年
曇りの日の玉子焼き(2023年6月)

そこに、自分で2つ足している

太平山 山田家 もりそば
純手打ちのもりそば。そば猪口と徳利が付く(2022年11月)

私が頼むのは、この3つだけではない。

もりそばと、ノンアルコールビールを足している。

そばは純手打ちである。わさびが良い。そば猪口と徳利が付いてきて、外の席で、平野を見ながらたぐる。

太平山 山田家 ノンアルコールビールと関東平野
山の上で車で来る場所。飲めないと分かっていて来ている(2024年11月)

そしてノンアルコールビール。ここは山の上で、車で来る場所である。飲めない場所だと分かっていて来ている。

呑み歩き研究所を名乗りながら、また酒を飲んでいない記事になった。ただ、この店で酒が飲めないことを、私は不満に思ったことがない。

整理すると、こうなる。

頼むもの由来
この土地が用意した3つ焼き鳥・玉子焼き・だんご太平山神社への奉納
私が足した2つもりそば・ノンアルコールビール自分の好み

土地のものを受け取って、自分のものを足す。それを4回とも同じ形で繰り返している。

太平山 山田家 もりそばと焼き鳥
背景の木々が緑。初夏の訪問(2023年6月)

4回とも月曜日だった

写真の記録を並べたら、気づいたことがある。

日付曜日
1回目2022年11月14日
2回目2023年6月19日
3回目2023年12月4日
4回目2024年11月18日

4回とも月曜である。

狙っていない。そして最近書いた栃木の別の記事を見返したら、そちらも全部月曜だった。

私はこの県に、月曜に来ているらしい。

季節のほうは、秋が3回、初夏が1回。これはなんとなく分かる。この場所は、空気が澄んでいる時期のほうが良いからだ。

太平山 山田家 卓の全景
もりそば、薬味、そば猪口、玉子焼き(2024年11月)

謙信平まで歩く

食べたあとは、謙信平まで歩く。

というより、この山は散歩のために来ているようなところがある。食べて、歩いて、また景色を見る。それで半日が終わる。

謙信平という名前には、由来がある。

永禄11年(1568年)9月上杉謙信と北条氏康が、ふもとの大中寺で和議を結んだ。そのあと謙信が太平山に登り、山上から南に関東平野を見渡して、その広さに驚いた——という伝承から、この名がついたと伝えられている。

謙信平 紅葉
真っ赤なモミジの向こうに太陽と眼下の平野(2023年12月)

紅葉の時期は、特に良い。

真っ赤なモミジの向こうに、太陽と、眼下の平野がある。この写真は12月の初め、午後2時半ごろのものである。

研究員の結論

また行くか:何度でも行く。

この店で私が持ち帰ったのは、名物には成り立ちがあるという当たり前のことだった。

焼き鳥と玉子焼きとだんごが並んでいるのを見て、私はずっと「この土地はこういう組み合わせが好きなのだな」くらいに思っていた。違った。神社に何が集まったか、という話だった。

名物とは、その土地で何が余っていたかの記録なのだと思う。奉納された鶏がいて、奉納された米があった。だから焼き鳥と玉子焼きとだんごになった。誰かが考えた組み合わせではなく、あったものが残った。

そして景色である。

460年ほど前に、武将が登ってきて驚いたという場所で、あんこのかかっただんごを食べている。

驚いた中身は、たぶん同じである。平野が、遠くまで見える。

向いているのは、歩く気のある人。食べるだけなら30分で終わるが、この場所の本体は、そのあとの散歩のほうにある。

店舗情報

項目内容
店名太平山 山田家
所在地栃木県栃木市平井町(太平山・謙信平
名物太平山三大名物=焼き鳥・玉子焼き・だんご
頼んだものだんご/焼き鳥/玉子焼き/もりそば/ノンアルコールビール(4回とも同じ
屋外の席あり。関東平野を正面に見る
訪問日2022年11月14日(月)/2023年6月19日(月)/2023年12月4日(月・謙信平)/2024年11月18日(月)

※価格は掲載していません。筆者が控えておらず、記憶で書くと不正確になるためです。

※営業時間・定休日はこの記事では記載しません。公表値は変わることがあるので、行く前にご確認ください。

※三大名物の由来は言い伝えです。栃木市の観光情報として公開されているものを要約しました。

※謙信平の由来も伝承です。史実として確定しているものではありません。

関連する調査報告

※記事中の飲食物・店の様子はいずれも筆者が実際に訪問して見聞きしたものです。訪問は2022年11月から2024年11月にかけての4回です。飲食代はすべて筆者が自分で支払っています。太平山三大名物および謙信平に関する記述は、栃木市および栃木県の観光情報によります。

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